LECTURE 13

ルド・ナレーム:ゲーム独自のテクスト性

映像制作とゲーム制作におけるナラティブ・コンストラクション・プロセスの違い

ストーリーを如何に表現するかが主導する映像制作

映像制作: テーマ→シノプシス→脚本→撮影・編集

シノプシスあたりまでは、「ストーリー」として時系列で示されるものの、編集の段階では、作者の意図によって再構成され、物語のディスクールとして、ナレームの連鎖が紡がれます。

観客はナレームの連鎖により、ストーリーを再構築(認知)していきます。

ルド・ストラクチャーを如何に伝えるかが主導になるゲーム制作

ゲーム制作: テーマ→ルド構築→ルドに含まれるナレームの連結→プレイヤーへ

ゲームの場合、ストーリ主導ではなくあくまでもルドが中心となります。テーマが決められた後、ルド・ストラクチャーが構成され、物語的表現も、その構成要素であるナレームが、ルドへと連結されていくのです。プレイヤーは、ルドからアフォードされる効率予測をナレームから象徴される物語性と連結することで、音や映像、コントローラへのレスポンスなどの“記号”を介してしか理解していくのです。

ルド・ナレーム:ゲーム独自のテクスト性

1.ナレームで表現されるルド・ストラクチャー
ゲームにおけるルト・ストラクチャーはその多くの部分を物語性と絡めて表現されます。そしてその部分を担っているのがナレームです。
具体的には次の4つに分かれます。

1)制限身体のデザイン:キャラクターの見た目やコントローラとその反応
具体例)キャラクターのドット絵(左右のパターンのみ)、十字キーと左右の移動、ドット絵パターンのアニメーションなど

2)関係や機能のデザイン:制限身体と作用空間、またはその後の連鎖的な反応を含むデザイン。具体例) ブロックのドット絵、ブロックにプレイヤーキャラクターが乗れるという機能、プレイヤーキャラクターでリンゴに触れると身長が倍になる機能。

3)アフォーダンスの接続デザイン 具体例)ステージデザイン、ゲームオーバーなど

2.ゲーム独自に表現されるもの
プレイヤーが記号を通してゲームを理解する際、物語論で言われているナラティブの構成要素、すなわちナレームとは定義出来ない内容もプレイヤーは理解しなければなりません。

具体例:
類似記号以外の抽象的な記号、即ち“標示記号“(矢印や、ブロック)や、”象徴記号“(数字や幾何学模様)といったもの、または、ルール的なもの、アルゴリズムや法則性などです。

これらは、ある意味、ゲーム独自の文法、あるいはディスクールとも言えることから、これらの記号群をルドナレームと称することにします。

プレイヤーは、ゲームデザイナーが示すルド・ストラクチャーをナレームと、ルドナレームによって理解することが出来るということです。

ここで、映像作品とゲーム作品におけるナレームの違いが明らかとなります。

・ 映画において、ナレームは、ストーリーを伝えるための基本的構成要素
・ ゲームにおいてナレーム及びルドナレームは、ルド.ストラクチャーを伝えるための基本的構成要素

ナレームとルド・ナレームにおけるデザイン構築の違い

ストーリーを伝えるナレームの接続
映像作品の場合、いつ、どのシーンをつなぐのかは、物語言説の技法として、監督や演出に委ねられます。つまり、作り手が何を配置するのは、●、○、■、☆、“牛”など全てが可能。

プレイヤーは、映像の中で示されたナレームの連鎖でストーリーの理解を深めつつも、シーンの途中でこれまでの文脈とは違ったものが提示されても、それをストーリーの意外性として理解を深めようとします。

ルドストラクチャーを伝えるルドナレームの接続

ゲーム作品において、ルドナレームは、法則を示し、プレイヤーに効率予測を導く具体的なデザインとしての役割を果たす。“次に来るのが何なのかを予測”させ、プレイを実現するためのフレームワークは何かを理解させる必要がある。

映像作品とゲーム作品におけるナレームの役割

映像作品においてナレームは様々な可能性を接続できる

ゲーム作品において、ナレームやルドナレームは、効率予測を導くことを前提に、プレイヤーが予測しうる蓋然性の高いパターンでしか接続させることが出来ない

課題1 自身が経験してきた映画作品とゲーム作品において、何に「驚き」を見出したのか考えてみよう。

映像作品とゲーム作品における「世界の抽象化」の方法の違い

人の創造物は、なんらかの形で現実世界を抽象化しています。これまで検証してきた、映像とゲームも同様です。二重振り子を例に考えましょう。

映像は一回性の記録

映像:既に起こった事例をそのまま記録。表象の再現度は100%。しかし、同じ動きしか再現不可能→どのような動きが起こりうるかなどの推測を示すことは出来ない。

ゲーム(インラクティブ)は法則の記録

ゲーム:現象を“法則”まで分解してメカニズムをシミュレート。表象の再現は不完全。しかし、法則からシミュレーションすることから、様々な動きを再現可能。ただし、全ての係数をパラメータとして入れることは不可能。

つまり、映像、ゲームともに、事象を完全に再現することは出来ない。

映像が世界を抽象化する際は、法則を完全に示すことがなく既に起こった事象を記録として提示します。

これに対し、ゲームが世界を抽象化する際は、本来複雑な世界を簡単な世界、半複雑な世界の中で、コントローラなどのインターフェースで制限された身体を通して提示します。

ストーリー重視のゲーム作品におけるナレームとルドナレームの提示
最近のゲームは、カットシーンなどを多用し、ストーリーが重要な作品も数多く存在します。

「アンチャーテッド黄金刀と消えた船団」の冒頭シーンでは、ヒマラヤ山脈の高山列車の中で血まみれの状態で眼を覚ましたプレイヤーは、崖から落下寸前の列車から脱出します。そのときは、ジャンプ移動のルドをプレイヤーは体験します。列車を上りきり、安全な場所に移動したところで、安堵のセリフが挿入されますが、その後、移動していくと急に敵が出現します。ここからは、敵を倒すためのルドが提示されるようになります。

つまり、それまでプレイヤーが予測していた蓋然性とは異なったルドである(敵の撃破)へと、ストーリーを伝えるためのナレームによって、強制的にプレイヤーの注目すべきルドを提示したのです。

課題2「HALO」の冒頭シーンをプレイし、ゲーム的なナレーム及びルドナレームと、映画的なナレームが如何に連結されているか考察してみよう。
Halo: The Master Chief Collection

パブリッシャー:Microsoft Studios
ディベロッパー:343 Industries
ジャンル:SF シューティング
リリース:2014年
プラットフォーム:Xbox One

Xboxローンチ時に同プラットフォームのキラータイトルの1つとしてリリースされた、FPSの決定版『Halo』シリーズをXbox One向けに最適化。同シリーズは従来、PC向けジャンルとされたFPSを家庭用据え置き機向けに大胆にアレンジし、ゲームパッドでのゲームプレイに最適化させることを実現した。本作はその中でも、最も重要なキャラクターであるMaster Chiefを主人公に据えた主要作品4作をひとつのパッケージにまとめたもの。2015年に発売予定の最新作『Halo 5 Guardians』のマルチプレイベータへのアクセス権なども同根された。