LECTURE 12

ストーリー、ナラティブ、物語言説(ディスクール)

物語構造とは

物語とは、次のように構成されます。

ストーリー:最初から最後まで時系列でつながる一連の出来事であるとされて
物語言説(物語のディスクール):語り手、語りの視点、物語時空間を提示する順序、表現技法など、物事を「語る」技法
ナラティブとはストーリーと、物語のディスクールで構成されたものを指す。

課題1:「桃太郎」を巡る次の3種のナラティブについて、ストーリーと物語のディスクールから分析してみよう。

桃太郎から、ナラティブという概念を学ぼう

文学以外の分野へと広がる「ナラティブ」、「物語のディスクール」

物語のディスクールは文字以外のメディア表現も包含すべき(シーモア・チャットマン)

「語りの行為」には、ダイエジェティック(Diegetic)(文字、口頭による語り)ミメティック(Mimetic)(ビジュアルによる語り)がある(デービット・ボードウェル)

映像における語り:「(劇中)合図(ヒント)や導きを示し、観客にファブラ(ストーリー†)を構築させる中で、話のシュジェート(道筋)や、映像スタイルを相互に交差させていくプロセス(デービット・ボードウェル)

ストーリーに関する研究

ストーリーを類型化する試みや研究は、過去さまざまな形で進められてきました。代表的な研究としては以下のものがあります。

● ギリシア三大悲劇詩人(アテナイのアイスキュロス、ソポクレス、エウリピデス)を元にした分類
● 古今東西の英雄に関する神話伝承に「英雄の旅」と呼ばれる共通項目があることを論じた、ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」の研究
● 昔話を構造主義に基づいて分析し、31の機能に整理したウラジミール・プロップの「昔話の形態学」研究
● 推理小説を構造主義に基づいて分析し、20 の機能に整理した「ヴァン・ダインの二十則」

本書ではその一例として「英雄の旅」に見る英雄譚のパターンを紹介します。
1:出発
2:冒険への招へい
3:招へいの否定
4:超越的援助
5:境界線の越境
6:もといた世界からの離脱:
7:儀式
8:試練への道
9:神々(女神)との会合
10:誘惑:なし
11:父への償い、究極の力を持つ存在との直面
12:神格化(主要人物が死とともに神格化する)
13:究極の恩恵(目標の実現)
14:帰還
15:帰還の否定
16:幻想的飛行
17:脱出
18:元の世界の境界の越境
19:不立ちの世界の達人
20:生への自由の獲得

物語言説(物語のディスクール)の分析方法 ● 語り手からの分析
● 語られる時間軸からの分析(前置的、後置的、同時的、挿入的など)
● 語りの演出(ドラマチックか?客観的か、抽象的か、写実的か)
● 語りの展開に関する分析
 -起承転結(漢詩や絶句)
 -序・破・急(日本の伝統音楽や古典芸能)
 ―三幕構造=状況設定、葛藤、クライマックスと解決(欧米戯曲、映画)

課題2:「スターウォーズ:新たなる希望」と「スターウォーズ旧三部作」そして「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の物語展開を英雄譚の類型及び三幕構造の視点から分析してみよう

ナレーム:ナラティブの基本的な構成要素

ゲームの場合、ストーリー構造についてはプレイヤーの解釈に依拠することが多い場合があります。このような場合は、更に物語的要素を細分化して分析する必要があります。 ここで、重要なのが、ナラティブの構成要素についての研究です。

ゲームにおける基本的な構成要素、ルドの相対するようなものとしては「ナレーム」が挙げられます。

ナラティブに関する先行研究を踏まえて、ルドと相対するような「ナラティブの基本的な構成要素」について考えていきましょう。ここで紹介するのは、ナレームという概念です。

ナレーム(文学)「表面的な構造を有する全ての物語的に機能する最小単位」、つまり「物語として機能する要素の最小単位」であり、それには1つの文と他の文との関係において論理的文法的整合性をもっている限り、「文字列」や「節」も含まれる。(ヘンリー・ウィットマン)

これを基本にすると映像におけるナレームは、ボードウェルの「語り」の概念を引き継ぎ、次のように考えられます。

登場人物、表情、事物、物品、セリフ、視覚効果、音響効果など映像をめぐるあらゆる要素、またはこれらの組み合わせにより構成された、観客にストーリーを解釈させる最低限の要素

ゲームの場合も映像と同様で、プレイヤーがプレイを体験しながらゲーム上の時間を進めるということです。これらを考慮すると、キャラクター、オブジェクト、空間デザイン、記号、またはこれらの組み合わせにより構成された物語的時空間をプレイヤーが解釈し、次の物語的時空間状況へと進むことができる最低限の要素

ルド・ストラクチャーにおけるナレームの役割

ヘッドオン

パブリッシャー&ディベロッパー:セガ・エンタープライゼス
ジャンル:アクション(ドットイート)
リリース:1979年
プラットフォーム:アーケード

画面上に表示されたドットを全て吸収すればクリアという、ドットイートと呼ばれるジャンルの草分け的なゲーム。ゲームは、要所で車線変更が可能な円周状のサーキットで行われ、外周から内周まで計5車線が存在する。プレイヤーの車とC P Uの操作する車はそれぞれ反対方向に周回し、両者が激突すればミスとなる。後にUターン可能なレーンがついた「II」もリリースされた。




「パックマン」と「ヘッドオン」は双方とも
・ ドットを吸収することでポイントを増やす
・ 全てのドットを吸収するとクリア
・ 敵機にあたるとデンジャー状態になる
というルド・ストラクチャーは同等です。確かに、パワーアップアイテムによる攻守逆転が無いという点は違いますが、その仕組みが「ヘッドオン」におけるナレームである車同氏の戦いという文脈で、通常のドットよりサイズの大きいドットを消すという行為であった場合、プレイヤーがどこまで感情移入できるでしょうか?
つまり、プレイヤーの操る対象がパックマンという「生き物を思わせるキャラクター」であるからこそ、ドットが「エサ」であるということがプレイヤーに理解されます。そして、「大きなドットは大きなエサだからパワーアップできる」という発想の連鎖が自然になされます。 ナレームとして分析すると「パックマン」には
1. これは生き物だ
2. 生き物はエサを食べる
3. 大きなエサを食べたらパワーアップする
このような発想の連鎖が自然になされることが、プレイヤーをパックマンの世界にいざなうことになります。これらによってプレイヤーはストーリーを想起することができます。

ナレームの役割

つまり「キャラクターの見た目」や「エサを食べる」により、ルドの意味をプレイヤーに理解させやすくする

課題2「戦国BASARA」と「北斗無双」におけるルドとナレームの違いを分析してみよう。
戦国BASARA

パブリッシャー&ディベロッパー:カプコン
ジャンル:アクション
リリース:2004年
プラットフォーム:プレイステーション 2、Xbox

日本の戦国時代を舞台に、さまざまな武将たちが一騎当千の戦いを繰り広げるアクションゲーム。第1作では真田幸村をはじめ15名の戦国武将を使用でき、桶狭間の戦いから始まる群雄割拠の時代が遊べる。先に発売された「真・三國無双」シリーズとほぼ同じゲームシステムで、両者をあわせて「無双シリーズ」と呼ばれることもある。




北斗無双

パブリッシャー&ディベロッパー:コーエー
ジャンル:アクション
リリース:2010年
プラットフォーム:プレイステーション 3、Xbox 360

コーエーの人気アクションゲーム「無双」シリーズと、漫画『北斗の拳』のコラボ作品として開発されたゲーム。手軽な操作で豪快なアクションを繰り出し、無数の敵をなぎ倒していく「一騎当千」アクションは健在で、原作のケンシロウの活躍を追体験できる。 ゲームモードは原作をベースに北斗四兄弟編までのストーリーが展開する「伝説編」と、ゲームのオリジナルストーリーが楽しめる「幻闘編」の2つがある。前者はアクションアドベンチャー、後者は従来通りのタクティカルアクシ ョンとなっている。主人公はケンシロウ、ラオウら8名で、キャラクターによって北斗、南斗、その他の3タイプの操作に分かれている。