LECTURE 11

ゲーム性とは何か?

効率予測とは、「高リスク短時間」と「低リスク長時間」のあいだの最適解を、プレイヤーが自身のスキルレベルに応じて判断する行為です。
効率をおこなわせるための仕組みをゲームにデザインすることで、より多くのプレイヤーが適切な難易度バランスをゲームから受け取ります。
プレイヤーは、ゲームから効率予測を見いだせる限りはそこにフロー状態を感じ、ゲームプレイを継続してくれるのです。
つまり、ゲーム性とは、効率予測を喚起するようデザインされたシステムである。

課題1:これまで受講してきた内容を踏まえたうえで、あらためてゲーム性を自分の言葉で語ってみましょう。

つまり、ゲームデザイナーは、プレイヤーの持続的プレイを導きだすために、プレイヤー自らが設定した目的を達成するうえでの効率予測をアフォードする(喚起する)デザインを考える必要があります。
これをこの講義では、ルドと呼びます。
この名称は、「遊び、冗談」を意味するラテン語「ludus」に由来します。
多くのゲームは、複数のルドから成り立っており、それぞれのバランスが全体且つ相互を影響します。

このような内包構造およびをルド・ストラクチャーと呼びます。
これはいわばゲームの設計図のようなものです。同時に、ゲームデザインを分析するうえでも役立ちます。 ルド・ストラクチャーを図表でデザインするには

1単位のルド

まずは、ルド・ストラクチャーの基本単位ルドのデザインステップは次のとおりです。
①ゲームデザイナーがプレイヤーに発見してもらいたい効率予測の名称を、ルドのタイトルとして最上部に記載する。
②その下にカッコを描く
③内部に、プレイヤーが選択できる難易度バランスの範囲を記載する。
a. 左側には低リスクの行動範囲を記入する。
b. 右側には高リスクの行動範囲を記入する。
④最下部に、ルドによってプレイヤーがどの程度の時間を費やすのかを記述する。

ルド・ストラクチャーの構成方法

続いて、ルド・ストラクチャーです。ほとんどのゲームは、1単位のルドで構成されるのではなく、複数のルドで構成されています。

このような入れ子関係があるとき、一番外側のルドを「親」と呼び、内側のルドを「子」と呼びます。
一番外側の「親」になれるのは、目標達成に費やされる時間の範囲が最も大きいものです。

ルド・ストラクチャーについても、左側によりリスクが高いルドを、右側によりリスクの低いルドを配置します。
また、デンジャーは、プレイヤーが直面する「状態」であり、それは、本来効率予測において選択しうる「行為」とは違います。
しかし、前述のとおり、ルドでは、よりリスクの高いものを右側に配置する記述方法に統一しています。
そのため、リスクが溢れた状態を示すデンジャーは多くの場合、右側に配置します。
なお、ルド・ストラクチャーは、状況に応じ、横に展開される場合と縦に展開される場合の双方があり得ます。では、ルドを用いてゲームを分析しましょう。

事例①スーパーマリオのジャンプ

「スーパーマリオブラザーズ」のジャンプにおいて、基本的なルドはジャンプで渡ると、次のタイミングを待つとの行為で構成されます。
リスクが高いのは、即座にジャンプすること(何が起きるか分からないので)、低いのは、次のタイミングを待つ(状況を確認して行うので)になります。

効率予測をアフォードするデザイン「ルド」

次は、以下の連続を体験した際の架空の横スクロールアクションゲームを例にとって、「ステージの隙間をジャンプで渡る」というルドを考えます。

課題3:「スーパーマリオブラザーズ」においては、ジャンプする隙間の広さでどのようなリスクが生まれるのか?そのリスクを明確に示すには何が必要なのか考えてみよう。

次は、縦ブロックの配置からルドを考えてみましょう。

ルドがルドを呼ぶ

「ステージの隙間をジャンプで渡る」という方法を習得したプレイヤーにとって、この局面はさほど難しいものではないでしょう。
「ジャンプで渡る」というアクションから、「ジャンプで上がる」というアクションが簡単に想像できるからです。

ブロックが上下運動を繰り返しているのも、隙間が広がったり狭まったりしているのと同じだと直感的に把握できます。
そのため、「ジャンプで渡る」と同様の効率予測が喚起されます。つまり、低い位置へのジャンプは低リスク・高コストであり、高い位置へのジャンプは高リスク・低コストであることが理解されるのです。
これはつまり、ひとつのルドが別のルドをアフォードしているということです。ゲームデザイナーは、ルドのこのような性質をうまく利用して作用空間をデザインすることで、ユーザーに対して効率予測の発見を促すことができます。

ルドの組み合わせ

「スーパーマリオブラザーズ」は、こういった、ルドが組み合わされる場合もあります。
「ジャンプで渡る」と「ジャンプで上る」を習得した後は、「ジャンプで飛び乗る」も想像できるからです。

これをルド・ストラクチャーで示したのが次の図です。

「ジャンプで飛び乗る」は既知の複数個の効率予測から新たな効率予測が発見されます。
従って、「ジャンプで飛び乗る」のルドは、既知の効率予測を内包しながらも、より難易度が高いもの(つまり、必要な時間コストが大きいもの)であるため一階層上位に記載します。
これにより、プレイヤーは違和感を覚えることなく、スキルを上昇させていくことができます。

ルドによる敵の配置

ゲーム未体験のプレイヤーを想定してみましょう。はじめてこの状態を目の当たりにしたプレイヤーは、どういった行動をとるでしょうか?
もしかしたら、このプレイヤーはキノコが食べられると思い、クリボーにぶつかってみるかもしれません。

つまりキャラクターの外観から「キノコをとる」ための効率予測を検証し実行にうつしたというわけです。
その結果は、ミスというデンジャー状態の発生です。

この場合、デンジャー状態が発生するデザインがされることで、結果的に、クリボーにぶつかるという行為が、リスクが高いものであるとの学習が成されて、それ以降のプレイ時は、効率予測が変化します。
具体的にはクリボーを「敵」であると認識し、その「敵を避けたい」などの「戦略」に変化するのです。

これは、「ジャンプで渡る」ルドと「敵を踏む」の組み合わせです。
一見シンプルに見えますが、このような組み合わせでゲームをより複雑にすることが出来ます。

事例②パックマンに見るルド・ストラクチャー

次にパックマンをルド・ストラクチャーで分析します。
基本的な要素は、「①ドット取得のための効率予測」になります。ただしモンスターに接触するとデンジャー状態が発生します。
従って、プレイヤーは、ドットを取得する行為か、ドットを無視して逃げるか選択を選びデンジャー状態になることを回避します。
ただし、モンスターを回避する必要がな状況がこのゲームには存在します。それがパワーエサの取得です。このパワーエサに関わるルドは次の図のとおりです。

一時的な不死身状態のルドでは、パックマンはパワーエサを取得することで、攻守が反転しモンスターを追いかけて食べることができるようになります。
初心者の場合は攻守反転よりは、「デンジャーにならないという状態(いわゆる不死身状態)」になることを求めてパワーエサをとる行為が観察されます。
一方、スキルが高くなると、攻守が反転しモンスターを追いかけて食べることを利用できるようになります。
つまり、低リスクで「すぐにパワーエサを取得し生存する」という選択と高リスクで「未来の「デンジャー」に備えてパワーエサを温存する」という範囲の中で選ぶのが一時的な不死身状態のための効率予測をするうえでの選択肢です。

ルド・ストラクチャーでは、プレイヤーの難易度の受け取り方の可視化を行うため、リスクの高い選択範囲と、これを内包する上位の効率予測で系統立てる必要がある

では、これらのルドより上位に位置づけられるルドは何でしょうか?ドットの取得という行為で説明すると、「ドットを取得する」という行為自体は簡単すぎだが、この行為を連続で実行させる行為を、より長い目標達成時間をかけて行わせる行為」を意味します。
ですので、パックマンにおいては、上位構造に「全ドットを取得(ステージクリア)」というルドを設置することで、プレイヤーに、ドット取得という行為までの持続的プレイを実現しています。

このようにルド・ストラクチャーでは、右側に書かれていることは、すべて上に書かれていることと系統だっている必要がある。
この例の場合は、「ドットの取得」の上位概念で提示される効率予測の名称は「全ドットの取得(ステージクリア)」になるということです。

難易度が低くなる状況におけるルド・ストラクチャーのデザイン方法

「パックマン」では、「①ドットの取得」と比較し、「②一時的な不死身状態」がより難易度の低い行為であると位置づけられます。
不死身状態であれば、モンスターに攻撃されることが無いからです。この「パワーエサ」すらとれない状態ということは、このゲームにおける「デンジャー」状態、すなわち、モンスターにつかまるなどが発生することを意味します。
つまり、プレイヤーは強制的「残機の減少」を選択せざるを得ないということです。

ルド・ストラクチャーにおける「残機の減少」の位置づけ

強制的な時間消費が強いられる「デンジャー」はプレイヤーが持続的ゲームプレイをするうえで最も高いリスクであると言えます。
デンジャーは、プレイヤーが直面する「状態」であり、それは、本来効率予測において選択しうる「行為」とは違います。
ですが、リスクが最大限となりいプレイが強制的に中断されてしまったことからこの状況は右側に配置します。
また、残機の減少の上位概念には、ゲームオーバーが存在します。ただ、その後もプレイヤーの選択は続きます。
つまり、ゲームをリトライするか、それともゲームを終了するかの選択です。ゲームを終了してしまうことは、ゲームの持続的プレイにとっては最大限のリスクですから右側に配置され、リトライは持続的プレイを継続することから、低リスクへと位置づけられます。
このように、ゲームはプレイそのものに関するルド・ストラクチャーとデンジャー後における効率予測を構成するルド・ストラクチャーによって構成されています。

パックマンにおけるルド・ストラクチャーの全容

では、これら全てをルド・ストラクチャーで示しましょう。

課題4 ゲームデザイナーが予期しない部分にプレイなーが効率予測を導きだすというケースはあるのでしょうか?
それに対し、ゲームデザイナーはどう対処しているのでしょうか?