LECTURE 7

第7回 ゲームと触覚

ゲームの特徴はゲームコントローラーを介して、プレイヤーが「操作」できる点にある。では、この操作とは、記号論的にどのような意味を持つのだろうか。誰にでもわかりやすい操作方法を設計するためには、どのような点に配慮すればいいのだろうか。

ゲームは知覚・聴覚メディアを内包する「触覚メディア」である

【課題1】「Wii Fit」を視覚・聴覚・触覚に視点から分析してみよう。
1:Wii Fit

パブリッシャー&ディベロッパー:任天堂
ジャンル:その他
リリース:2007年
プラットフォーム:Wii

専用コントローラの「バランスWiiボード」に乗るなどして、さまざまなミニゲームを遊んだり、エクササイズができるゲームソフト。バランスWiiボードは世界で最も売れた体重計としてギネスブックにも登録された。
コンテンツはプレイヤーのボディマス指数を計る「からだ測定」と、「ヨガ」「筋トレ」「有酸素運動」「バランスゲーム」の4ジャンル、計48種類のトレーニングや運動感覚を向上させるミニゲームに分かれている。最大8人までのプレイヤーの記録を登録でき、ボディマス指数やスコアなどの変化を記録して、折れ線グラフで確認することも可能だ。
2009年には続編「Wii Fit plus」も発売された。またWii Uに対応し、新項目や新オプション機器「フィットメーター」を追加した「Wii fit U」も発表されている。

本作では画面上に表示されるさまざまなシチュエーションに応じて、適切に体を動かしながら、課題をクリアしていく点がゲームの根幹となっています。ゲームコントローラーを握って操作する通常のゲームと異なり、本作では体重型のコントローラーの上にのって操作します。すなわち足の裏という、体の新しい部位を通してゲーム世界に係わっていく点が特徴です。

しかし、「Wii Fit」について予備知識のない人が画面を見ることなく、プレイヤーだけを観察した場合、どのような感想をいだくでしょうか。おそらく何か板のような物の上で立ったり、体を動かしているだけにしか見えないでしょう。「ゲームを遊んでいる」と説明されても、ピンとこないと思われます。しかし、映像や音声とあわせて観察すると、ゲームの状況に応じて体を動かしていることが、理解できるようになるでしょう。

このようにゲームをはじめとしたインタラクティブ・コンテンツには、視覚・聴覚・触覚の抜きがたい関係性が見られます。こうした理由から、中島誠一はインタラクティブメディアを「視覚・聴覚・触覚の3つの次元で情報を伝える媒体」、すわなち「触覚メディア」と命名しました。そして触覚メディアは聴覚・視覚・視聴覚を内包するメディアであるとみなしました[1]。

文字→音声→画像→動画→インタラクティブへと発展したメディア

メディア史をひもとくと、メディアは新聞・本・雑誌などの視覚メディアから一般に普及しました。そこからラジオ・電話・レコードなどの聴覚メディアが続き、テレビ・映画・ビデオなどの視聴覚メディア全盛の時代を迎えています。そして、そこからさらにゲームやメディアアートなどの、触覚メディアへと統合されてきた経緯があります。

触覚メディアの三大要素

触覚メディアの三要素は、
▽レスポンス(脳とそれ以外での情報の循環速度)
▽リンク構造(データ間の構造だけでなく、他者とのネットワーク性までも含む)
▽GUI(視覚的インターフェース)――
です。つまり、三項目の優劣が、「触覚メディア」におけるメディアの優劣を決定づけます。
ゲームにも、これがそのままあてはまります。

ゲームは「触覚」でその世界観を伝える

以上の内容を整理したうえで、3章にわたって考察してきた「身体」「視覚」「世界」と触覚メディアの関係性について、考えてみましょう。すると、触覚メディアが伝えるものは「世界観」であると整理できます。

もっとも、ここでいう「世界観」とは、一般的に映画やゲームなどで用いられるものと異なり、「世界のなりたち」とでも言い替えられるものです。すでに繰り返し説明してきたとおり、プレイヤーはゲームプレイをとおして、自分の拡張された身体を再学習し、作用世界と非作用世界を認識しながら、世界のなりたち、すなわち「世界観」を理解していくのです。この点が他と異なる、ゲームすなわち触覚メディアの特徴だと言えます。

【課題2】「大神」をプレイし、その「触覚メディア」としての特徴を分析してみよう。
25:大神

パブリッシャー:カプコン
ディベロッパー:クローバースタジオ
ジャンル:アクション
リリース:2006年
プラットフォーム:プレイステーション2

大神(狼)アマテラスの魂が乗り移った白狼・白野威(しらぬい)を操作して、復活したヤマタノオロチの呪いで荒廃したナカツクニに緑を取り戻し、さまざまな妖怪と戦っていくアクションゲーム。トゥーンシェードによる日本画風の3DCGが特徴で、世界観や地名、人名なども古代日本のイメージが引用されている。
アマテラスは妖怪と三種の神器(鏡、勾玉、剣)を駆使して戦っていく。また左スティックで特定の模様を描くことで、13種類の特殊能力「筆しらべ」がくりだせる。それぞれの筆しらべを司る動物は十二支と猫(ベトナム、タイなどでは、猫が卯にあたる)となっている。
2010年には続編にあたる「大神伝〜小さき太陽〜」がニンテンドーDSで発売された。また2012年にはプレイステーション3用にHDリマスターされた「絶景版」が発売された。

「触覚メディア」としての「大神」で重要なのは、「筆しらべ」というシステムです。これは、大神の持つ神の力を用いて、本来は非作用空間である環境を作用空間に出来るというものです。プレイヤーは、R1ボタンを押して「筆」を持った瞬間から、墨が無くなってしまうまでの間、ゲーム世界の時間を止めることが出来ます。その間、□ボタンや、△ボタンを押しつつ、左スティックで筆を動かすこと、記号を描くことが出来るのです。それを描き終えると、ゲーム世界が再び動きだすとともに、木、岩、柱などを真っ二つにしたり、爆弾を作り上げたり、太陽を即座に昇らせたり、風、雷、炎を起こすなどが出来るようになります。また、時間が止まっている間に、「筆しらべ」で敵を倒すということも可能なため、これをあやつっている時間は、そのゲーム世界の中の神のようになった感覚すら覚えます。更に直感的になります。Zボタンを押しながらリモコンコントローラを降ることで実際に画面上に記号を出現させます。また、「大神伝小さき太陽」もDS版として、タッチペンで筆しらべをおこないます。このように「大神」シリーズはPS2版、Wii版、DS版ともども「触覚メディア」であるということをフルに活用していると言えるでしょう。

【課題3】Wiiリモコンを使い、そこで感じる「感覚」が何を伝えているのか分析してみよう。

Wiiリモコンにおける振動のデザインこそ、「触覚メディア」の本質だ

続いて、触覚メディアで必要となる、入力デバイスのデザイン設計について考えてみましょう。特に昨今のゲームは複雑化が進んでおり、ゲームコントローラーをいかに直感的に使用させるかが、多くの人にゲームをプレイしてもらううえで、重要なポイントとなっています。Wiiのリモコンコントローラ(以下、Wii リモコン)。Wiiリモコンを手に取って、センサーに反応するかリモンを手で振るとき、まず感じるのが振動です。指先にビクビクっ!としますよね。振動を入れることで、自分があたかもそれに触れているという感覺を受けるのです。まさに「触覚」によって情報を伝えていると言えるでしょう。

更なる研究のために

中島誠一 (1999)『触覚メディア』 インプレス