LECTURE 3

第3回 ゲーム的記号とは

記号を戦略的に組み合わせてユーザーを共感させる

ゲームは複数の記号が組み合わされて意味を成すものであり、かつ時間に応じて画面上に記される表象が、動的に変化するという点です。こうした特性を踏まえると、ゲームにおける記号の特徴は次の3点に集約されます。
・全体性
・空間的関連性
・時間的予想性
さらに、ゲームはインタラクティブなメディアであることから、その独自の特徴として
・身体性
が加わります。次項からは、そのひとつひとつについて説明していきましょう。

全体性――記号群のまとまりが新たな表象を生み出す

{ という記号を見てください。これ一つだと「中括弧」の片側にしか見えません。
ところが、中括弧の片側が並んでいるだけなのに、一定の規則性を持たせて配置することで、角や辺といった別の意味を人間は思い描いてしまうのです。実際にアスキーアートで描かれたイラストを見たことがある人も多いでしょう。モザイク画なども、その一例だと言えます。

【課題1】いくつかのアスキーアートをもとにそれらがいくつの記号で構成されているか考えてみよう。

空間的関連性――記号群の配置や動きが新たな表象を生み出す

【課題2】クイーンズ大学(カナダ)バイオモーション研究室サイトを体験し、15個の白点が何を象徴しているのか、考えてみよう。

http://www.biomotionlab.ca/Demos/BMLrating.html

これらは、モーションキャプチャー技術を用いて人間の関節の動きを記録した映像の一部です。そのため絵を動かすと、人間の動きであることが理解できます。このように、複数の記号の配置や動きを関連づけて、新しい表象を作り出すことができます。これを記号の「空間的関連性」と呼ぶことができます。

時間的予想性(ストーリー性)――記号群の順序が新たな表象を生み出す

これら写真の連続と、人間の特性を踏まえ、この人物はおそらく、なんらかの形でジャングルジムの中に入り込んでから、出たという流れを想像できます。
このように、二つの記号の差分から、その前後や中間の表象を想定できることを記号の「時間的予想性」と呼びます。漫画のコマ割りや映画のカット割りは、この時間的予想性をうまく活用しています。

身体性――操作を通した新たな表象

【課題3】こちらのフラッシュゲームをプレイしてみよう。

ゲームAとゲームBでは、違うというのはプレイした人ならわかります。ですが、プレイヤー以外は、その違いに気づけません。つまり、「Aの状態であったオブジェクトを受容者が能動的に操作することでBへと状態が変化する」という一連のシーケンスを包括的に「記号」として解釈することができるのです。

これはゲームのようなインタラクティブコンテンツ特有の特性です。そこで、このように操作を通して得られる表象を、筆者らは記号の持つ「身体性」と定義することにします。

【課題4】KINECTやWiiなどのゲームは、プレイしている当事者と、プレイヤーがゲームから受ける印象に大きな違いがあることの理由を考えてみよう。

ゲーム的記号の理解をふまえ、あらためてシューティングゲームをふりかえろう。

ここで改めて、振り返ってみましょう。これらは本当に同一ジャンルの作品なのでしょうか?

【課題5】記号や、遊びという視点で分析したとき、これらの「シューティングゲーム」は同類の遊びや記号で構成されているでしょうか?
10:Child of Eden

パブリッシャー:UBIソフト
ディベロッパー:キューエンタテインメント
ジャンル:シューティング
リリース:2011年
プラットフォーム:プレイステーション3、Xbox360

オープンネットワーク「Eden」内の電脳空間を進みながら、敵のウイルスをロックオンレーサー、トレーサー、ユーフォリアの3種類の武器を使い分けながら破壊していく一人称視点シューティングゲーム。「Rez」と同じくリズムシューティングの要素があり、実質的な続編となっている。ゲームデザイナーは水口哲也。
ワイヤーフレーム主体だった「Rez」と異なり、グラフィックは幾何学的なパーツが万華鏡のように飛び交う抽象的な世界となっている。また自機が表示されない一人称視点で、より深く世界との没入感が得られる。
コントローラでも操作できるが、Xbox360向けではKinect、PS3向けではPlaystation Moveの両モーションコントローラデバイスに対応しており、体感ゲームとしてプレイできる。

2:バトルフィールド3

パブリッシャー:EA
ディベロッパー:EA DICE
リリース:2011年
プラットフォーム:PC、PS3、Xbox360

FPS(一人称視点シューティング)の人気シリーズ最新作で、ゲームの舞台は西暦2014年のイラン。主な主人公はアメリカ海兵隊のヘンリー・ブラックバーン軍曹で、核爆弾を用いたテロ計画阻止のために戦っていく。ミッションによっては戦闘機パイロットや戦車兵になることもある。
マルチプレイではPC版では64人、コンシューマ版では24人の同時対戦をサポートしている。またシリーズで初めてオンラインによる2人協力プレイモードをサポートした。
プレイヤーが各種兵科を選択し、チームバトルを行う要素は健在で、本作では突撃兵・工兵・援護兵・偵察兵が用意されている。ジェット機や戦車など、100種類を越える武器とガジェットを使い分けることもできる。
なお、本作はイラン国内では発売禁止となっている。

3:ぎゃる☆がん

パブリッシャー:アルケミスト
ディベロッパー:インティ・クリエイツ
リリース:2011年
プラットフォーム:Xbox360、PS3

主人公はひょんなことから一日だけモテモテになった男子高校生で、自分に言い寄ってくる女の子を眼力で撃ち落とし、意中の異性に告白することが目的のレールガンシューティング。主人公には「精心力」ゲージがあり、これがゼロになるとゲームオーバーになる。ステージの合間にはヒロインとの会話が発生し、そこで選んだ選択肢で好感度が上下する。

またゲーム中に「ドキドキモード」に入ると、敏感な場所を眼力で狙って女の子を昇天させられる。身体の一部をズームすることもでき、ズームした状態で撃つと大幅にゲージを上昇させられる。

これらを確認すると、シューティングゲームも「アゴン」「アレア」「ミミクリ」「イリンクス」など、様々な遊びの組み合わせで成り立っているのがわかります。また、記号の集合という視点でも、身体性との関連などを考えても違いがあります。つまり同じジャンルで括られるゲームでも「遊びの類型」やその「組み合わせ」においてそれぞれ違いがあり、完全に同一というわけではありません。

このような状況は、シューティングゲーム以外の他のジャンル、すなわち、RGP、シミュレーション、アクション、パズル等あらゆるジャンルに同様の現象が存在するのです。
つまり記号と遊びとの間で、相互を結びつきつつも存在する「何か」、それこそが「ゲーム性」なのでしょう。