LECTURE 2

第2回 ゲームと記号

ゲームとは「記号と遊びの融合」ということが出来ます。今回は「記号」や「遊び」の 基本的理論の紹介とそれに基づくゲームの分析をします。

様々な記号の組み合わせでプレイヤーにゲーム体験を理解させる

現代における記号学の原点は、言語学者であるフェルデナン・ド・ソシュールと論理学者のチャールズ・サンダース・パースにたどり着きます。

ソシュールは言語学者として、表音文字である欧米言語を中心に文字とそれが指し示す意味との関係性を考察しました。そして「記号」とは「記号表現」と「記号内容」で構成されると分析しました。

たとえば「Tree」という単語を「記号」として捉えると、この記号は「ツリー」という発音、すなわち「記号表現」と、「地上部の茎が木質化した多年生で長身の植物」、すなわち「記号内容」を 同時に示していることを意味します。 このように「記号」は特定の「文字のつづり」が、「発音」と「概念」を同時に発想させるという二重性を指摘したことが重要なのです。

もっともこれだけでは、記号を分析するうえで限界があります。そこでソシュールの論をさらに発展させたのがパースです。

交通標識の止まれをどう解釈する?

【課題1】交通標識をソシュールの概念で分析してみよう。また、その限界は何か考えてみよう。

パース は全ての記号を「表意体」(representation)であるとし、
記号の理解には、
記号(The Sign)、
対象(The Object)、
解釈項(The Interpretant)
の三項関係を理解する必要があると指摘しました

パースの概念を用いて交通標識をあらためて分析してみよう

記号は「止まれ」という文字をあわせ持つ交通標識です。 対象は標識の前で「一次停止」している車両です。
解釈項は、「車両に乗車している場合、一次停止しなければならない」という意味になります。

このように分析プロセスにおいて、「記号」を解釈する人の状況などもあわせて分析することが提案されたことで、記号研究の汎用性が高まったのです。

記号の種類

パース記号を3種類に分析しました。以下のとおりです。

種類英語名概要
類似記号Icon具体的な事物を想起できるもの写真、彫刻、絵画
指標記号Index具体的な事物を想起できるもの事象を指し示すもの風見鶏(の示す方向)手の指し示す(方向)、積乱雲(夕立)
象徴記号Symbol「解釈」を介して記号と対象を結びつけるもの軍旗、合言葉、信条、文字、数字
【課題2】「クラッシュ・オブ・クラン」(作品ファイル1)のメイン画面にある10の記号を、 先ほどの分類で分類わけをしてみよう。

なお、⑦このゲームをプレイしているフレンドを確認できる機能にアクセスできることを表示したアイコンや⑧キャラクターが台車で様々なアイテムを運ぶ姿でアイテムショップの場所を示すアイコンなどのように、同じ記号に複数の特性が重層化して存在する場合もあります。

では、「遊び」は如何に分類化できるのでしょうか?
アカデミックでは、ロジェ・カイヨワがその類型を試みた初期の研究者です。
カイヨワはあらゆる「遊び」を「アゴン(競争)」「アレア(運)」「ミミクリ(模擬)」「イリンクス(眩暈)の4つに分類しました。さらにほとんどルールが存在しないものは「バイディア(遊び)」、より競技的な遊びを「ルドゥス(競技)」として整理しました。

種類概要例A(パイディア的)例B(ルドウス的)
競争Agonかけっこスポーツ
Aleaじゃんけん宝くじ、懸賞
模倣Mimicryママゴト物まね大会、演劇
眩暈Ilinxぐるぐるまわり空中サーカス

また、これらもそれぞれが図表のように有機的につながると指摘しています。

「記号と遊びの統合」であるゲームもその発展とともに様々な遊びの要素がひとつのゲームに統合されています。

【課題3】シューティィングゲームの歴史から、ゲームにおける記号と遊びの編瀬にについて考えよう
01:Breakout

パブリッシャー&ディベロッパー:アタリ
ジャンル:アクション
リリース:1976年
プラットフォーム:アーケード

画面上を跳ね回るボールを、画面下のパドルを左右に操作して打ち返しながら、画面上部に配置されたブロックを破壊していくアクションゲーム。
ブロックの上部には空間が設けられており、ブロックを縦に破壊してボールをブロックの向こう側に送り込むと、勝手に跳ね回って上から破壊してくれる。このように序盤は辛抱してボールを跳ね返し、後半に一気に高得点が得られるという、二段構えのゲーム展開になっている点が特徴である。
「ポン」と同じく、パドルにボールが当たる位置で反射角が変えられるようになっており、これがブロックの特定の箇所を狙えば得をするという内容とうまくマッチしている。
本作はアップルの創業者であるスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックが制作に関わったゲームとしても有名である。伝記「スティーブ・ジョブズ」(講談社)によると、基本となるゲームデザインはノーラン・ブッシュネルが行い、ウォズニアックが論理回路を組み、ジョブズが基板制作を行ったとされている。
本作はライセンス販売や並行輸入、さらにはコピー品の製造販売などで日本にも普及し、「ブロック崩し」というタイトルで人気を博した。

02:スペースインベーダー

パブリッシャー:タイトー
ディベロッパー:パシフィック工業
ジャンル:シューティング
リリース:1978年
プラットフォーム:アーケード

空前の「スペースインベーダー」ブームを作り出し、日本のゲーム産業を創出したといえる記念碑的作品。画面上に配置される縦5列、横11列のインベーダーを、画面下に表示される砲台を左右に移動させながら攻撃し、倒していく。インベーダーは攻撃をしつつ徐々に画面の下側に移動していき、一番下に到達されるとゲームオーバーとなる。
ゲームデザイナーは西門友宏氏で、「Breakout」のブロックを異星人に変更し、攻撃してくるようにしたら……というデザインコンセプトで開発された。敵キャラクターには飛行機や戦車、人などのアイディアもあったが、飛行機や戦車は技術的制約から実現できず、人間は倫理面から回避され、映画「スターウォーズ」ブームの影響を受けて異星人と戦う設定となった。
本作はCPUが搭載されたゲーム基板で作られた最初期の国産ゲームである。これ以前は論理回路でプログラムを表現していたため、プログラムの調整には基板ごと変更が必要で、細かい調整が難しかった。これが本作ではすべてプログラムで調整可能になり、よりきめ細かいゲーム開発が可能になった。本作はまたATARI VCS向けに移植され、初期のキラーソフトとなった。

03:ゼビウス

パブリッシャー&ディベロッパー:ナムコ(現バンダイナムコゲームス)
ジャンル:シューティング
リリース:1983年
プラットフォーム:アーケード

縦スクロールシューティングの古典的名作。自機ソルバルウを操り、対空攻撃武器ザッパーと対地攻撃武器ブラスターという二種類の武器を使い分けながら、地球に侵攻したゼビウス軍を撃破・侵攻していく。森や砂漠などの自然を舞台としたステージや、銀色のグラデーションからなるキャラクター群、スペシャルフラッグをはじめとした隠しキャラクターの存在などで人気を集めた。
ゲームデザイナーは遠藤雅伸で、リリース後に世界設定やバックストーリーを記した小説「ファードラウト」が出版された。これ以降ゲームを作る上で世界観やストーリー性が重要視されるようになり、ゲームデザイナーという職業も認知が広まった。
全編にわたってアンビエントミュージックと特徴的な効果音が多用され、ゲームミュージックが各社からアルバムとして発売されるきっかけを作った。社会学者の中沢新一が「ゲームフリークはバグと戯れる」でゼビウスについて論じるなど、ゲームが学術的に論じられるようになった最初期のタイトルでもある。

04:タイニーゼビウス

パブリッシャー:電波新聞社
ディベロッパー:松島徹
ジャンル:シューティング
リリース:1984年
プラットフォーム:PC(PC-6001)

1980年代はアーケード基板と他のプラットフォーム(ファミコン、PCなど)の技術的格差が大きく、移植においては何らかの抽象化や省略が行われるのが常だった。その中でも特に有名なものが1984年に発売されたPC-6001版「タイニーゼビウス」である。作者の松島徹氏は当時中学生で、ローレゾリューションで描かれたゲーム画面はオリジナル版と大きく差異があったが、プレイ感覚はできるだけ忠実に再現するように配慮されていた。他に「タイニーゼビウスMK-II」「グロブダー」「スペースハリアー」のPC-6001mkII版、「タイニーゼビウス for MZ-700」(作者:古籏一浩)などがある。

05:スペースハリアー

パブリッシャー&ディベロッパー:セガ・エンタープライゼス(現セガサミー)
ジャンル:シューティング
リリース:1985年
プラットフォーム:アーケード

「ハングオン」に続くセガの体感ゲーム第2弾。ファンタジー世界のドラゴンランドを救うために、超能力者のハリアーと善のドラゴン・ユーライアが旅立つ。アナログスティックに連動して動作する筐体に乗り込み、ハリアーを操作しながらトリガーやボタンで敵や障害物を破壊していく。グラフィックはスプライトを利用した疑似3Dで、三人称視点シューティングである。
ゲームデザイナーは鈴木裕氏。垂直離着陸戦闘機ハリアーをモチーフとしており、当初は自機が戦闘機だったが、開発終盤で人間体(超能力戦士)に差し替えられた。 地平の3D表現・多重スクロール・高速スクロールなどの、当時最先端とされた技術が率先して採用されている。当時の3Dシューティングゲームの様式を確立し、多くのフォロワー作品を生んだ。

06:アフターバーナー

パブリッシャー&ディベロッパー:セガ・エンタープライゼス(現セガサミー)
ジャンル:シューティング
リリース:1987年
プラットフォーム:アーケード

A国海軍のパイロットが最新鋭戦闘機F14-XX(ダブルエックス)に搭乗し、Z国の包囲網を突破しながら、機密兵器情報の入ったフロッピーディスクを輸送するシューティングゲーム。映画「トップガン」のヒットを受けて制作された。
体感ゲームの一つで、ゲームデザイナーは鈴木裕氏。アナログスティックで動作する筐体に乗り込み、トリガーとボタンで敵機を撃破していく。スプライトによる疑似3Dで、三人称視点シューティングである。
「アフターバーナー」のリリース3ヶ月後に、スロットルレバーを搭載した「II」が登場した。通常「アフターバーナー」といえば「II」をさしている。

07:ギャラクシアン3

パブリッシャー&ディベロッパー:ナムコ(現バンダイナムコゲームス)
ジャンル:シューティング
リリース:1994年
プラットフォーム:アーケード(テーマパーク)

遊園地・テーマパーク向けアトラクションで、プレイヤーはUSGF(銀河連邦宇宙軍)の隊員として重戦闘艇ドラグーンに乗り込み、宇宙空間を舞台にさまざまな敵と戦っていく。グラフィックは3DCGで描かれており、一人称視点によるレールガンシューティングで、プレイヤーは砲手となり、自機の操縦はできない。同時プレイ人数により28人版、16人版、8人版、プレイステーション版がある。
28人版は1990年に開催された「国際花と緑の博覧会」に出展された。円筒形のスクリーンを内側から見るスタイルで各自が着座し、プロジェクターで投影される映像を見ながら、手元の銃器型コントローラーで敵機を攻撃していく。フロア全体が油圧機構で上下する要素もある。
1991年には背景世界を踏襲して一人用に制作し直された「スターブレード」もリリースされた。

08:パンツァードラグーン

パブリッシャー&ディベロッパー:セガ・エンタープライゼス(現セガサミー)
ジャンル:シューティング
リリース:1995年
プラットフォーム:セガサターン

古代文明が産み落とした生物兵器「攻性生物」で人類が滅びつつある世界で、最強かつ伝説上の存在と言われていた「ドラゴン」を駆り、冒険を繰り広げるシューティングゲーム。グラフィックは3DCGで描かれており、決められたルートを移動する三人称視点シューティングだが、コントローラ操作でドラゴンをある程度移動させられる。視点も前後左右に変更でき、通常攻撃のショットと、複数の敵をまとめて攻撃できるロックオンレーザーを切り替えながら進んでいく。
本作はシリーズ化され、三作目の「アゼル -パンツァードラグーン RPG」ではストーリー要素が加わった一方で、ゲームシステムはコマンド式RPGとなった。

09:Rez

パブリッシャー:セガ・エンタープライゼス(現セガサミー)
ディベロッパー:ユナイテッド・ゲーム・アーティスツ
ジャンル:シューティング
リリース:2001年
プラットフォーム:ドリームキャスト・プレイステーション2

ワイヤーフレームで構成された電脳空間の中を進みながら、敵のウイルスをロックオンレーザーで破壊していく三人称視点シューティングゲームで、リズムシューティングの先駆け。ゲームデザイナーは水口哲也。
ロックオンとレーザー発射時の効果音がパーカッションになっており、連続して射撃していくことでリズムを生み出していく。サウンドはテクノミュージックの影響を強く受けており、ゲームプレイを通して独特なグルーブ感が体験できる(PS2版では操作に応じて振動するトランスバイブレーターも発売された)。 他に杉山圭一、アダム・フリーランドなど国内外の有名アーティストがサウンドを提供している。2008年にはXbox360版「Rez HD」がXbox LIVE Aecadeで配信されている。

更なる研究のために

丸山圭三郎(1981) 『ソシュールの思想』岩場書店

Pierce, C.S (2003) “Basic Concept of Peircean Sign Theory” from C.S. Pierce The Collected Paper of Charles Sanders Pierce, (1965)Charles Hartshorne& Paul Weiss(eds) Cambridge, MA: Harvard University Press Chapter 5 Semiotics Volume 1 M. Gottdiener, K. Boklund-Lagopoulou and A Ph Lagopoulos (eds) London: Sage Publications

Chandler, D Semiotics for Beginners http://users.aber.ac.uk/dgc/Documents/S4B/sem02.html (2014/1/4アクセス)

Caillois, R(1967) Les Jeux et les Hommes[Le masque et le vertige], édition revue et augmentée.(original 1958)(ロジェ・カイヨワ、多田道太郎(訳)、塚崎幹夫(訳)(1990)『遊びと人間』講談社学術文庫)