LECTURE 1

第1回 ゲームの定義について考えよう

ふだん私たちが遊んでいるゲームは、研究としてどのように定義できるか考えてみよう。

ゲームとは何でしょうか? 欧米のゲームデザインに関する研究で必読書とされる「ルールズ・オブ・プレイ」(ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン)では「ゲームとはプレイヤーがルールで定められた人工的な対立に参加するシステムであり、そこから定量化できる結果が生じるもの」(p 161)と定義づけられています。 他の研究者はどのように定義しているでしょうか?以下を参考にしてみましょう。

ユールが示した、「ゲーム」の範囲です。

  • ルールの存在
  • 数量化と変動可能な結果の存在
  • 評価設定可能な結果の存在
  • プレイヤー技能に応じた結果の達成
  • プレイヤーと結果とのつながりの存在
  • 交渉可能な結末の存在

なお、項目1)、2)及び4)はゲームシステムに関する条件項目、3)、4)、5)はプレイヤーとゲームとの関係性に関する項目、そして6)はゲームプレイと実世界との関わりに関する項目と示しています。

ここまでの課題

作品ファイルにある、『PONG』、『シムシティ』を視聴したうえで、これまで示されたゲームの定義に当てはまるかどうか確認してみよう。

01:PONG

パブリッシャー&ディベロッパー:アタリ
リリース:1971年
ジャンル:アクション
プラットフォーム:アーケード

アーケードゲームの第2号で、商業的に成功した最初のテレビゲーム。第1号「コンピュータスペース」の商業的不振を受け、よりシンプルで広い層に訴求するゲームをめざして開発された。プレイヤーは画面上のパドルをボリュームコントローラで上下に操作し、画面上を行き交うボールを打ち返していき、15点先取した方が勝ちとなる。 ノーラン・ブッシュネルが、世界初のテレビゲーム機「オデッセイ」に内蔵された「テーブルテニス」に影響を受けて、部下のアラン・アルコーンに概要を伝えたところ、▽パドルを縦長にする▽ボールがパドルに当たった場所でボールの角度が変わる▽2種類のビープ音が鳴るーーなど独自の工夫が盛り込まれ、間口が広く奥が深いゲームとなった。
ブッシュネルは「PONG」の成功でアタリ社を創設し、ゲーム産業自体を創出していく。

02:シムシティシリーズ

パブリッシャー:EAなど
ディベロッパー:マクシス
ジャンル:都市計画シミュレーション
リリース:1989年
プラットフォーム:マッキントッシュなど(オリジナル版)

市長となって都市開発を行っていく都市育成シミュレーション。未開地にインフラを整備し、建物の区分けを行い、公共施設や公園などを設置して、人口を増やしていく。セル・オートマトンを利用した自律環境系ゲームのはしりとしても有名。
人口が増えれば地価が上昇し、税収が増え、さらに都市が拡張できるが、公害や犯罪なども増えるため、バランス良く開発していく必要がある。特定の目的が設定されたシナリオモードもあるが、メインモードでは特に勝利条件などは設定されておらず、プレイヤーは比較的自由に都市計画が進められる。税収がマイナスになるとゲームが終了する。
オリジナル版のゲームデザイナーはウィル・ライトで、自身の作品であるシューティングゲーム「バンゲリングベイ」のステージ自動生成システムからヒントを得て開発された。多くの続編があり、家庭用ゲーム機やPC、携帯電話ゲームなどにも移植されている。

これらはゲーム?

ゲームでないものが何かを追加するだけでゲーム的になるものも数多くあります。

【課題2】次の作品ファイルの状況を確認し、これらが自身にとってゲームと感じられるのか否かについて考えて見ましょう。
03:日本鬼子プロジェクト

日本鬼子(ひのものおにこ)とは、2010年に2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板で発案された日本の萌えキャラクターのこと。日本鬼子(リーベングイズ)とは、主に中国語圏(中国・台湾・シンガポール)で使われる日本人に対する最大級の蔑称で、2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件を受けて中国で発生したデモによって認知度が高まった。

これに対して、2ちゃんねるで全く別の意味を「上書き」してしまおうというスレッドが建ち、萌え擬人化キャラクター化が進められた。日本の昔話に登場する「鬼」をモチーフとし、
▽色白で、長い黒髪。
▽二本の角が生えている。
▽外観年齢が16〜18歳▽般若の面、薙刀を持つ――などの特徴が見られる。他に少女タイプの「小日本」(こひのもと)などの派生系もある(「小日本」も日本の侮辱的表現)

04:Makankosappo

Makankosappoは「ドラゴンボール」シリーズのピッコロが放つ必殺技のひとつである「魔貫光殺法」を指す。人差し指と中指をひたいに添えて集中したあと、強力な気を一点に集中させて発するという技。その威力は多くの人を吹き飛ばす。これを女子高生が真似て撮影し、Twitterにアップしたところ、瞬く間に話題となり、世界中で写真に撮影し、ネット上に投稿するようになった。facebook上で作成されたグループページなどで見られる。

オリキャラで4人パーティ!

オリキャラで4人パーティ!とは、イラスト投稿サイトpixivのイメージレスポンスの一つ。RPGのパーティ構成のように、オリジナルキャラクター4体で構成されるイラストを、テンプレートに従って作成し、投稿する。

共に一定のテーマにしたがって行われる不特定多数のイメージ投稿行為で、ソーシャルコミュニケーションである。参加者が「イイネ」数を競うなどの外的条件を見いだすことで、ゲーム的な広がりを持ち得るともいえる。

ゲームの『定義』は技術的変化に基づいて動的に変化してきた

ゲームデザイナーはこれまで世界に存在するありとあらゆるものの「何か」から、さまざまなゲームを生み出してきました。従って、重要なのは新たなテクノロジーや、従来ゲームのために使われてこなかったモノやコトを活用し、
既存の枠組みでは存在し得なかった「新しいゲーム」を世に生み出すための発想
です。つまりゲームを語るとき、ゲームの構成要素について試論を重ねるのもさることながら、どのような概念や枠組みで現実を分析すれば「新たなゲームを生み出すことにつながるのか」を考えることも重要なのです。本書の目的は、こういった概念を提示することにあります。

人はなぜゲームをプレイするのか

これまで存在していなかった「新しいゲーム」を生み出す発想はどのようにして生まれるのか? 筆者らは、その鍵が「人はゲームのどのような部分に興味を喚起され、それを持続的にプレイしたいと思ってしまうのか?」を探ることにあると考えています。一般的にそれは「ゲーム性」と呼ばれているようです。ただし、
一方、「ゲーム性」については、ソーシャルメディアなどを通して国内の様々なゲームデザイナーが議論しています[4]。その定義の部分を表にしてみました。

このようにゲームデザイナーの中でも「ゲーム性」の解釈は多岐にわたっています。「ルール」「インタラクション(リアクションの有無)」「判定の存在」ならびに「含み(分岐)の可能性」など、ゲーム構造そのものを示したものから、「かけひき」「操作性」「プレイアビリティ」「所要時間のコントロール感」「戦略性」「ジレンマ(の有無)」など、プレイ時にプレイヤーが体感すべき項目を示したもの。そして「快感や気持ち良さへと導くデザイン」「報酬を求めて学習する仕組みを利用したもの」など、プレイ時またはプレイ後にユーザーが得る特定の心理状況を体験させるための仕組みを提示するなどさまざまです。「現場では使わせない」としている上田氏がその理由として「何を指しているかわからなくなる」という点をあげているのもうなずけます。

【課題3】自分にとって、何が「ゲーム性」であるか考えてみよう

更なる研究のために

今回の講義で参考にした文献です。自身で熟読してみましょう。

[1]Salen, K. and E. Zimmerman(2004) Rules of Play: Game Designs Fundamentals. Massachusetts, The MIT Press (ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン 山本貴光(訳)(2011)『ルールズ・オブ・プレイ上 ゲームデザインの基礎』P.160

[2] Juul, J (2005) Half-Real between Real Rules and Fictional Worlds The MIT Press, Massachusetts

[3]井上明人(2005)「ビデオゲームの議論における「ゲーム性」という言葉をめぐって -雑誌『ゲーム批評』を中心にその使われ方の状況を探る」http://www.critiqueofgames.net/paper/gamesei.html

[4] 業界人の「ゲーム性」談義 (2010) http://togetter.com/li/84642